時短勤務2026-08-18監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

時短勤務からフルタイム復帰、後悔しないタイミングの見極め方

この記事の要点

「そろそろフルタイムに戻そうと思うんですが、正直まだ迷っていて」

面談の場で、時短勤務中の方からこの言葉を聞くことは少なくありません。子どもが3歳になったから、小学校に上がるから、周りが戻し始めたから——きっかけは人それぞれですが、共通しているのは「本当に今なのか」という迷いです。結論から言うと、フルタイム復帰の適切なタイミングに万人共通の正解はなく、ご自身で判断軸を持つことが後悔を減らす一番の方法だと僕は考えています。この記事では、その判断軸を3つに分解したうえで、実際によくある失敗パターンとその対処、相談から移行までの実務的な動き方まで、面談で聞いた具体例を交えてお伝えします。

0. 結論から言うと、フルタイム復帰の見極め軸は「子どもの生活」「会社のサイクル」「機会損失」の3つ

僕が面談で相談者の方と一緒に整理する際は、まず次の3つの軸で現状を棚卸ししていただいています。①子どもの生活基盤が復帰後の負荷に耐えられる状態か、②会社の評価・昇進サイクルと復帰タイミングがどう重なるか、③時短を続けた場合とフルタイムに戻った場合の収入差・機会損失がどれくらいあるか。この3つが揃って初めて「自分にとっての適切な時期」が見えてくる、というのが僕の体感値です。どれか1つだけで判断すると、後から「思っていたのと違った」というギャップが生まれやすくなります。

1. なぜ「みんなが戻す時期」に合わせると後悔するのか

フルタイム復帰のタイミングとしてよく挙がるのが、子どもが3歳になるタイミングと、小学校入学のタイミングです。育児・介護休業法では、3歳に満たない子を養育する労働者に対して事業主が短時間勤務制度を設けることが義務とされており、3歳以降小学校就学前については、始業時刻の変更やテレワークなど複数の措置から選んで講じることが求められる形に制度が整理されています(厚生労働省「育児・介護休業法」)。つまり3歳や就学というのは制度上の節目であって、生活の節目とは限りません。僕が面談で聞いた話では、周囲が一斉に時短を切り上げる空気に押されてフルタイムに戻したものの、学童の閉所時間に間に合わずお迎えの調整に追われ、数ヶ月後に時短へ戻したというケースもありました。制度の節目と、ご自身の生活が回るタイミングは別物として考える必要があります。

2. 判断軸①:子どもの生活基盤が「回る」かどうか

ここで確認していただきたいのは、フルタイム復帰後の一日の流れを具体的にシミュレーションできているかどうかです。学童保育の閉所時間と、フルタイム勤務時の退社時刻・通勤時間を足し算したときに無理がないか。子どもが体調を崩した際に、誰がどのタイミングで迎えに行けるのか。パートナーとの分担は「言葉の上での合意」ではなく、実際に運用できているかどうかを見る必要があります。僕の体感値では、この生活基盤のシミュレーションを紙に書き出すだけで、迷いの半分くらいは整理がつく方が多い印象です。

特に見落とされがちなのが、パートナーの分担が「平常時は回るが、繁忙期には崩れる」というケースです。ある相談者は、夫婦で送迎を週交代する取り決めをしてフルタイムに戻したものの、パートナーの仕事が四半期末に急に忙しくなる業種だったため、その時期だけ送迎が回らなくなり、結局その相談者が有給を切り崩して対応することになったと話していました。書き出してみて「まだ回らない」と感じるなら、それはフルタイム復帰を急ぐべきでないという一つのサインだと考えています。年間を通じて繁忙期があるかどうかまで洗い出しておくと、精度が上がります。

3. 判断軸②:会社の評価サイクル、③:収入と機会損失を数字で比較する

2つ目の軸は、会社側の時間軸です。賞与査定の基準期間はいつからいつまでか、昇進・昇格の審査は年に何回あるのか、人事異動の内示は何月頃に出るのか。この会社側のサイクルを把握したうえで、フルタイム復帰のタイミングをどこに乗せるかを考えると、同じ「フルタイムに戻る」でも結果が変わってきます。たとえば査定期間の始まる直前に戻れば、その期間はフルタイムでの実績として評価対象に含まれやすくなりますが、査定期間の終盤に戻すと、実質的な評価対象期間が短くなり、次のサイクルまで評価が持ち越されることもあります。上司や人事に「次回の評価サイクルはいつからか」を確認するだけでも、判断材料はかなり増えます。

3つ目は、収入とキャリア機会の比較です。時短勤務の給与は所定労働時間に比例して計算されることが一般的で、賞与も勤務実績や評価に応じて按分される会社が多いというのが実務上の傾向です。フルタイムに戻すことでこの比例部分が解消される一方、残業や出張への対応が増え、負荷も上がります。単純な月収の差だけでなく、昇進機会や裁量ある業務へのアサインといった「機会」の差も含めて比較することが大切です。次の表は、時短継続とフルタイム復帰を比較する際に僕が面談でよく使う整理の軸です。

比較軸時短勤務を継続した場合フルタイムに復帰した場合
収入所定時間に比例した給与・賞与が目安比例計算が解消され、残業代の対象にもなり得る
評価・昇進機会会社によっては評価対象業務が限定されやすい評価サイクルに乗れば昇進審査の対象になりやすい
生活の負荷子どもの送迎・急な体調不良への対応がしやすい学童の閉所時間や急な呼び出しへの調整が必要になる

この表はあくまで一般的な傾向の整理であり、実際の制度運用は会社ごとに差があります。ご自身の会社の就業規則や評価制度を確認したうえで、当てはめて考えていただくのが良いと思います。

4. ケースで見る判断の分かれ目とよくある失敗への対処

実際の面談で聞いたケースを3つ比較してみます。1つ目は、小学校入学に合わせて機械的にフルタイムへ戻したケースです。学童の申し込みは済ませていたものの、実際に通わせてみると閉所時間が思ったより早く、パートナーの帰宅時間との間に隙間ができてしまいました。結果として復帰から3ヶ月ほどで時短勤務へ戻す申請を出すことになり、本人いわく「戻す・戻さないの手続きだけで気力を削られた」とのことでした。

2つ目は、同じく小学校入学のタイミングでしたが、入学の半年前から学童の利用実態を近所の先輩ママにヒアリングし、閉所時間ギリギリの生活になりそうだと分かった時点で、まず在宅勤務を週2日残したままフルタイムに切り替えるという移行を会社に相談したケースです。負荷を見ながら半年かけて完全出社型に戻していき、結果として大きな混乱なく評価サイクルにも乗ることができました。

3つ目は、生活基盤自体は問題なかったものの、会社の評価サイクルを確認せずに査定期間の終盤でフルタイムに戻してしまったケースです。本人としては「早く実績を見せたい」という気持ちで動いたものの、査定の締めまで残り1ヶ月ほどしかなく、その期の評価にはほとんど反映されませんでした。次のサイクルまで約半年待つことになり、「もう少し早く人事に聞いておけばよかった」と振り返っていました。

3つのケースに共通する失敗パターンは、①生活基盤の検証を「戻してから」やってしまう、②パートナーとの分担を平常時の想定だけで固めてしまう、③会社側のサイクルを確認せずに自分の意思だけで時期を決めてしまう、の3つです。対処法はいずれもシンプルで、「戻す前」に検証と確認を済ませておくこと。僕の体感値では、この前倒しができるかどうかが、後悔するかどうかの分かれ目になっているケースが多いです。

5. 実務ステップ:相談のタイミングと切り出し方、移行期の運用

3つの軸で方向性が固まったら、次は実際の相談です。僕がおすすめしているのは、評価サイクルの3〜6ヶ月前を目安に上司へ相談を始めることです。直前の申し出だと、会社側も業務のアサインを組み替える時間が足りず、フルタイムに戻っても実質的に時短時代と変わらない業務範囲のままになってしまうことがあるためです。切り出し方としては、「いつまでに」ではなく「こういう状態になったら戻したいと考えている」という条件を先に伝えておくと、上司側も準備がしやすくなります。以下は、僕が面談でお伝えしている大まかな進め方の目安です。

  1. 復帰予定の2〜3ヶ月前:学童や送迎の実態を先輩ママ・パパにヒアリングし、生活基盤のシミュレーションを紙に書き出す(所要目安1〜2週間)
  2. 復帰予定の3〜6ヶ月前:上司へ方向性を共有し、次回の評価サイクルの区切りを確認する(面談1回、30分程度)
  3. 復帰予定の2〜3ヶ月前:パートナーと繁忙期も含めた分担表を作り直し、崩れやすい時期を洗い出す(所要目安1週間)
  4. 復帰の1〜2ヶ月前:可能であれば在宅・時差出勤を挟んだ段階移行のプランを人事・上司とすり合わせる
  5. 復帰後1〜2ヶ月:実際の負荷を振り返り、必要なら制度上の再利用条件を確認しておく

復帰してみて「思っていたより負荷が高い」と感じたときに、時短勤務へ戻れる余地があるかどうかを事前に人事へ確認しておくことも、心理的な安心材料になります。制度は一方通行である必要はなく、状況に応じて行き来できるものだと捉えておく方が、判断そのものが軽くなると僕は考えています。

6.(結論)

フルタイム復帰のタイミングに、誰にでも当てはまる正解はありません。子どもの生活基盤が回るか、会社の評価サイクルとどう重なるか、収入と機会損失のバランスはどうか——この3つの軸で現状を整理し、周囲のタイミングではなくご自身の基準で決めることが、後悔を減らす一番の近道だと僕は考えています。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. フルタイム復帰は子どもが何歳になったら決めるべきですか

年齢だけでは決められません。子どもの学童や体調不良時の対応、パートナーとの分担が「回る」実態があるかを先に確認することが結論です。3歳や小学校入学という節目はきっかけにはなりますが、生活基盤が整っていない状態で戻すと、僕が面談で聞く限り数ヶ月で時短に戻すケースも珍しくありません。

Q. フルタイムに戻すと昇進や評価は本当に有利になりますか

会社の評価サイクルと重なるかどうかで結果が変わるというのが結論です。賞与査定期や昇進審査の直前に戻せば実績を積む期間が確保できますが、査定直後に戻しても翌サイクルまで評価対象になりにくいことがあります。時期そのものより「サイクルのどこに乗せるか」を確認する方が実務的です。

Q. 一度フルタイムに戻したら時短には戻れませんか

多くの会社では制度上戻れる場合がありますが、運用は会社ごとに差があるというのが実態です。育児・介護休業法上、短時間勤務制度は原則3歳未満の子を養育する労働者に事業主が設ける義務がある制度なので、対象年齢内であれば再度申請できる余地があります。復帰前に人事へ制度の再利用条件を確認しておくと安心です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

この記事を、eBookで持ち帰る。 本記事をスライド形式のPDF(16:9・全12ページ)に再構成しました。お名前とメールのご登録だけで、その場でダウンロードできます。
無料でPDFを受け取る →

自分の現在地を、まず知る。

「女性クエスト 適性診断」(無料)で、いま狙える職域タイプが分かります。個別に相談したい方はキャリア面談へ。

適性診断をやってみる → キャリア面談をする →

あわせて読む