管理職登用2026-07-08 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

女性管理職登用の実態 — 「数字だけの目標」と「本気の目標」の違い

この記事の要点

「管理職になりたいか」と聞かれると、多くの方が一瞬言葉に詰まります。面談で理由を掘り下げていくと、「なりたくない」のではなく「なれるイメージが持てない」という答えにたどり着くことが多いのです。ロールモデルが身近にいない、長時間労働が前提に見える、家庭と両立できる気がしない——こうした不安の背後には、実際のデータで裏付けられる構造的な壁があります。今回は、女性管理職登用の実態を数字と現場の両面から整理し、「本気の会社」と「数字だけの会社」の見分け方を提示します。

0. 前提 — 女性管理職比率の全国的な水準

内閣府男女共同参画局の資料等によれば、日本企業の課長相当職以上に占める女性の割合は、諸外国と比較して低い水準にとどまっており、政府はこれを引き上げる目標を掲げ続けています。2003年に「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度に」という目標(いわゆる202030)が掲げられましたが達成に至らず、女性活躍推進法の強化などを通じて目標達成の時期を後ろ倒ししながら取り組みが続いています。この事実だけでも、「管理職になれる気がしない」という不安が、個人の能力の問題ではなく構造の問題であることが分かります。

1. なぜ女性管理職が増えないのか — 3つの構造的な壁

登用が進まない背景には、大きく3つの壁があります。1つ目は「パイプラインの壁」。そもそも管理職候補となる母集団(一定年次以上の女性社員)が少ない、または途中でキャリアを中断してしまう構造です。2つ目は「評価の壁」。長時間労働・在社時間の長さを暗黙の評価基準にしている会社では、育児等で時間制約のある社員が不利になりやすい構造です。3つ目は「ロールモデルの壁」。身近に育児と管理職を両立している女性がいないことで、「自分にはできない」という思い込みが強化される構造です。

この3つの壁は互いに絡み合っています。パイプラインが細いから、ロールモデルが増えない。ロールモデルがいないから、評価の壁を越えようとする人が減る。この悪循環を断ち切るには、会社側の制度と、個人の情報収集の両方が必要です。

2. 「本気の会社」を見分ける質問 — 目標の具体性を聞く

女性活躍推進法にもとづき、常時101人以上を雇用する企業は行動計画の策定・公表が義務づけられていますが、その中身の本気度には大きな差があります。見分けるための質問は、「女性管理職比率の目標は、いつまでに何%と設定されていますか。現状の数字も教えてください」です。

「本気の会社」は、現状の数字と目標の数字、そして達成に向けた具体的な施策(管理職候補への計画的な配置転換、メンター制度、管理職研修の受講機会など)まで即答できます。一方で「数字だけの会社」は、目標数値は掲げているものの、達成のための施策を聞かれると答えに詰まる傾向があります。目標は「宣言」ではなく「計画」として語られているかどうかが、見極めの分かれ目です。

3. 管理職への打診はどう来るか — 「打診されるのを待つ」は非効率

率直に言うと、管理職への打診は、実力があれば自然に来るものだと思われがちですが、現実にはそう単純ではありません。上司や人事が「この人はきっと家庭があるから、負荷の大きい管理職は望んでいないだろう」と、本人に確認せずに機会そのものを差し控えてしまう「無意識のバイアス」が働くことがあります。これはアンコンシャス・バイアスと呼ばれ、多くの企業が研修等で対策に取り組んでいるテーマです。

この構造を踏まえると、「打診されるのを待つ」のは非効率な戦略です。むしろ、上司との1on1などの機会に「将来的に管理職を目指したいと考えている」と、自分から意思表示することが重要になります。意思表示をした人と、していない人とでは、会社側が用意する機会の数が変わってくるというのが、多くの人事担当者から聞く実感です。

4. 管理職になってからの両立設計 — 「全部自分でやる」をやめる

管理職になった後の両立で最もよく聞く悩みは、「プレイングマネージャーとして、自分の実務とマネジメント業務の両方を抱え込んでしまう」というものです。特に、初めて管理職になったばかりの方は、部下に仕事を任せることに不安を感じ、結果的に自分の業務量が増えてしまう傾向があります。

両立している管理職に共通する工夫は、「権限委譲を早い段階で進める」ことです。最初から完璧に任せようとせず、小さな意思決定から少しずつ部下に権限を移していく。任せることで生まれた時間を、自分にしかできない意思決定や育児の時間に充てる。これは能力の問題ではなく、マネジメントスタイルの選び方の問題です。

チェック項目本気の会社の特徴数字だけの会社の特徴
目標設定現状値・目標値・達成年限が具体的目標値のみで根拠が曖昧
登用の仕組み計画的な配置転換・メンター制度あり個人の頑張り任せ
ロールモデル育児と両立する管理職が複数名いる該当者がいない、または特例扱い

この表は当メディア独自の整理による目安であり、統計値ではありません。企業選び・社内での意思表示の参考としてご活用ください。

5. 面談で聞いた実例 — 「打診を待たず手を挙げた」ケース

面談で聞いた事例を紹介します(加工しています)。ある方は、育休から復職して2年ほど経った頃、上司との1on1で「将来的にチームリーダーを目指したい」と自分から伝えました。当初は「時短勤務中だから難しいのでは」という反応もあったそうですが、目標達成度に応じた評価制度を持つ会社だったこともあり、半年後にプロジェクトリーダーという形で機会を得ることができたそうです。「言わなければ、あと数年は機会が来なかったかもしれない」というのが、その方の振り返りでした。

この事例が示すのは、意思表示のタイミングと、それを受け止められる評価制度がセットで機能して初めて登用につながる、という当たり前だけれど見落とされがちな事実です。だからこそ、これまでの記事で扱ってきた「評価制度の見極め」と「くるみん・えるぼし認定」の確認が、ここでも生きてきます。

6. 転職での管理職登用 — 「社内昇格」より早いルートになることも

社内でのパイプラインが細い会社にいる場合、転職によって管理職ポジションを得るというルートも現実的な選択肢です。特に、組織を拡大しているベンチャー企業や、女性管理職比率の引き上げを急ぐ大手企業では、外部からのマネジメント経験者採用に積極的なケースが増えています。社内で数年待つより、転職によってポジションそのものを獲得するほうが早い場合もあります。

ただし、転職での管理職登用は、入社後すぐに実績を求められるプレッシャーも大きくなります。前職での実績を、面接でどう言語化して伝えるかが重要です。特に、チームの成果に対して自分がどう貢献したかを、数字や具体的なエピソードで語れるように準備しておくことをおすすめします。人材紹介会社を使う場合は、担当者に「管理職経験者の登用実績」を聞いてみるのも一つの判断材料になります。また、面接の場では、実績だけでなく「入社後、最初の3ヶ月でどのようにチームの信頼を築くつもりか」まで自分の言葉で語れるように準備しておくと、評価する側の安心材料になります。

7. 管理職になることを迷っている方へ — 「なる/ならない」は一度きりの選択ではない

最後に、管理職を目指すかどうかで迷っている方に伝えたいことがあります。管理職になるかどうかは、一度決めたら後戻りできない選択ではありません。実際に、管理職を一度経験した後、家庭の状況の変化に合わせて専門職に戻るという選択をする方も少なくありませんし、逆に専門職として力を蓄えてから、タイミングを見てマネジメントに挑戦する方もいます。

大事なのは、「今の自分に合わないから一生やらない」と決めつけないことと、「一度チャンスが来たら逃してはいけない」とプレッシャーをかけすぎないことの、両方のバランスです。人生の中でキャリアの重心は何度でも動かせますし、動かしていいのです。

(結論)「なれる気がしない」の正体は、多くの場合バイアスと機会不足

まとめます。①女性管理職比率が低い背景には、パイプライン・評価・ロールモデルという3つの構造的な壁がある。②「本気の会社」は目標の数字だけでなく達成計画まで具体的に語れる。③打診を待つのではなく、自分から意思表示することが機会につながりやすい。④管理職になった後は、権限委譲を早めに進めることで両立の負荷を下げられる。

「なれる気がしない」という感覚は、多くの場合、能力ではなく機会と情報の不足から来ています。構造を知ることが、その感覚を変える第一歩です。数字とロールモデルの両方を確かめてから、自分のペースで意思表示をしていきましょう。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問の診断で、自分に合う時短キャリアのタイプを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 女性管理職が増えない理由は?

記事は3つの構造的な壁を挙げています。1つ目は管理職候補の母集団が少ない「パイプラインの壁」、2つ目は長時間労働を暗黙の評価基準にする「評価の壁」、3つ目は身近に両立する女性がいない「ロールモデルの壁」です。これらは互いに絡み合い悪循環を生むため、会社側の制度と個人の情報収集の両方が必要だとしています。

Q. 本気で女性登用に取り組む会社の見分け方は?

記事では「女性管理職比率の目標をいつまでに何%と設定し、現状の数字はどうか」を質問することを勧めています。本気の会社は現状値・目標値に加え、計画的な配置転換やメンター制度、管理職研修など達成の具体的施策まで即答できます。逆に数字だけの会社は目標値は掲げても施策を聞かれると答えに詰まる傾向があると整理しています。

Q. 管理職になった後の家庭との両立のコツは?

記事は「全部自分でやる」のをやめることを勧めています。よくある悩みはプレイングマネージャーとして実務とマネジメントを抱え込むことですが、両立する管理職に共通する工夫は権限委譲を早い段階で進めることです。小さな意思決定から少しずつ部下に任せ、生まれた時間を自分にしかできない仕事や育児に充てる。能力ではなくマネジメントスタイルの問題だとしています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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