くるみん認定企業の実態 — マークの裏にある基準と、見落としがちな落とし穴
- くるみん認定は次世代育成支援対策推進法にもとづく制度で、行動計画は数年単位で更新が必要な継続的な目標達成の証である。
- くるみんは男性育休取得率10%以上、プラチナくるみんは30%以上が基準で、認定年度と基準レベルを確認する価値がある。
- くるみんは主に育休の取りやすさの指標で、復職後の評価・昇格はえるぼし認定や評価制度など別の観点とあわせて確認する必要がある。
「くるみんマークがついている会社なので、安心して応募しました」
面談でこう話す方に、僕はいつも同じ質問をします。「くるみんマークが、具体的にどんな基準をクリアした証なのか、ご存じですか」と。多くの場合、答えは「なんとなく、子育てにやさしい会社ということですよね」という程度です。それ自体は間違っていませんが、マークの裏側にある基準を知っているかどうかで、企業選びの解像度が大きく変わります。今回は、くるみん認定の中身と、認定企業に入る前に確かめるべきことを整理します。
0. 前提 — くるみんは「取得すれば終わり」の制度ではない
くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法にもとづき、厚生労働省が所管する制度です。企業は「一般事業主行動計画」を策定・公表し、計画に定めた目標を達成すると、都道府県労働局への申請を経て認定を受けられます。重要なのは、これが一度取得すれば永続する称号ではないという点です。行動計画は数年単位で更新が必要で、目標未達であれば次の認定が受けられません。つまりくるみんマークは「取得した瞬間の実績」ではなく、「継続的に目標を追い続けている証」として見るべきものです。
1. くるみんとプラチナくるみんの違い — 基準のレベル差を知る
くるみんには段階があります。基本の「くるみん」は、男性の育児休業等取得率が一定割合以上(現行基準では10%以上)などの要件を満たすことで取得できます。より高い水準(男性育休取得率30%以上など)をクリアすると「プラチナくるみん」に格上げされ、さらに不妊治療支援に関する「くるみんプラス」という上乗せ認定もあります。
基準は法改正のたびに引き上げられてきた経緯があり、直近では男性育休取得率の基準が段階的に厳格化されています。つまり、古い基準で取得したまま更新していない「くるみん」と、直近の厳しい基準を満たした「プラチナくるみん」とでは、企業の本気度に差がある可能性が高いということです。認定を受けた年度も、あわせて確認する価値があります。
2. 数字だけでは見えない「運用」の差 — 制度と実態のギャップ
率直に言うと、くるみん認定企業でも、現場レベルでは「育休は取りづらい空気がある」という声を、面談で聞くことは珍しくありません。認定基準は主に取得率という「数字」で測られるため、数字を達成すること自体が目的化してしまっているケースもあります。例えば、対象者が少ない部署に育休取得者が偏っていて、全社的な運用にはなっていない、といった事情です。
これを見抜くには、面接で「育休を取得した男性社員は、どの部署にどれくらいいますか」「時短勤務者は、どの職種に多いですか」と具体的に聞くのが有効です。特定の部署に偏っている場合、その他の部署では取りづらい実態がある可能性を考慮する必要があります。逆に、全社的に分散している場合は、制度が組織文化として根づいていると判断できます。
3. くるみん認定と「時短勤務のキャリア」は別の話であることに注意
誤解がないように申し上げると、くるみん認定は主に「育児休業の取得しやすさ」を測る指標であり、「時短勤務者の評価・昇格のしやすさ」を直接保証するものではありません。育休は取りやすいが、復職後の時短勤務者は補助的な業務に回されがちという会社も実在します。くるみん認定は「入口の子育て支援」に強い会社を見つける指標として使い、「復職後の評価」については前回の記事で扱った別のチェックポイント(評価制度の設計、女性活躍推進法の公表情報、昇格実例)と組み合わせて確認することをおすすめします。
4. くるみん以外にも見るべき制度 — えるぼし認定との違い
子育て支援の指標がくるみんだとすれば、女性の活躍推進そのものを測る指標として「えるぼし認定」があります。女性活躍推進法にもとづく認定制度で、採用、継続就業、労働時間、管理職比率、多様なキャリアコースの5つの評価項目のうち、満たす項目数に応じて1〜3段階の認定を受けられ、さらに高水準を満たすと「プラチナえるぼし」になります。
くるみんが「子育てのしやすさ」、えるぼしが「女性のキャリアの広がり」を測る指標だとすると、時短勤務からの復職・キャリア継続を重視する方にとっては、くるみんとえるぼしの両方を取得している企業が、より安心材料になります。片方だけでなく、両方の認定状況をあわせて確認することをおすすめします。
| 認定制度 | 主な評価軸 | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| くるみん/プラチナくるみん | 育児休業の取得しやすさ | 認定年度・男性育休取得率の推移 |
| えるぼし/プラチナえるぼし | 女性の活躍・キャリアの広がり | 管理職比率・継続就業年数の男女差 |
この表は当メディア独自の整理による目安であり、統計値ではありません。企業選びの一次的なスクリーニングとしてご活用ください。
5. 求人票・企業サイトでの確認手順 — 5分でできるチェック
実際の確認手順を示します。①企業サイトの採用ページまたはコーポレートページで「くるみん」「えるぼし」の記載を探す。②厚生労働省の「両立支援のひろば」で企業名を検索し、行動計画の内容と目標達成状況を確認する。③「女性の活躍推進企業データベース」で女性管理職比率・平均継続勤務年数の男女差を確認する。この3つのサイトを見るだけで、求人票だけでは分からない情報にかなり近づけます。
ここまでの調査は、応募前の10〜15分でできる作業です。多くの方が求人票の条件面だけで応募・辞退を判断してしまいますが、公的データベースまで確認する人は多くありません。だからこそ、この一手間が他の候補者との差別化にもなります。
6. 面談で聞いた実例 — 認定はあっても運用に差が出た2つのケース
ここで、実際に僕が面談で聞いた事例を2つ紹介します(個人が特定されない範囲に加工しています)。1つ目は、プラチナくるみんを取得している大手メーカーのケースです。全社的に男性育休の取得が当たり前になっており、時短勤務からの復職者にも通常の評価サイクルが適用されていました。人事の担当者に聞いたところ、「育休取得率を数字で追うだけでなく、復職後の面談を人事が同席して行う」という運用まで踏み込んでいるとのことでした。数字の裏にきちんと運用がある好例です。
2つ目は、くるみんを取得しているものの、実際には特定の管理部門にだけ育休取得者が集中していた中堅企業のケースです。営業部門では「男性が育休を取った前例がない」状態が続いており、時短勤務者も管理部門に偏って配置される傾向がありました。この方は転職を機に、部署ごとの取得実績を面接で確認する習慣を持つようになったそうです。この2つの事例からも分かるとおり、認定の有無だけでなく、社内のどこに実績が偏っているかまで見る視点が重要です。
この違いを生んでいるのは、突き詰めれば「制度を作った理由」の違いだと僕は考えています。前者は経営が本気で組織文化を変えようとした結果として認定を取りに行き、後者は認定取得自体が目的化してしまった。この差は、面接で1つ質問するだけでもある程度見抜けます。「くるみん認定を取得された経緯・きっかけを教えてください」。この質問への答えが、数値目標の話に終始するのか、組織づくりの物語として語られるのかで、本気度の温度差が伝わってきます。
7. 認定を取得していない会社を、一律に除外すべきではない理由
ここまで認定制度の確認方法を説明してきましたが、誤解しないでいただきたいのは、「くるみん・えるぼしを取得していない会社=悪い会社」ではないという点です。認定の申請・維持には相応の事務コストがかかるため、実態としては十分に子育てにやさしい運用をしていても、申請自体をしていない中小企業は少なくありません。
特にベンチャー企業やスタートアップでは、そもそも制度としての行動計画を整備する余力がない一方で、経営者自身が柔軟な働き方を体現しているケースもあります。認定の有無は「有力な判断材料の一つ」として使いつつ、面接での質問や口コミサイトの情報も組み合わせて、総合的に判断することをおすすめします。
(結論)マークは「入口の合格証」であって「保証書」ではない
まとめます。①くるみん認定は継続的な目標達成を条件とする制度で、認定年度と基準のレベル(くるみん/プラチナくるみん)を確認する価値がある。②数字達成の裏にある運用の偏りは、面接で部署別の実態を聞くことで見抜ける。③くるみんは主に育休の取りやすさの指標であり、復職後の評価・昇格は別の観点(えるぼし認定、評価制度など)とあわせて確認する必要がある。
マークがあることは、良いスタート地点であることの証明にはなりますが、ゴールの保証ではありません。マークの中身を読む力を持つことが、後悔のない会社選びにつながります。
皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問の診断で、自分に合う時短キャリアのタイプを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. くるみんとプラチナくるみんの違いは?
基準のレベル差があります。基本のくるみんは男性の育児休業等取得率が一定割合以上(現行基準で10%以上)などの要件で取得でき、より高い水準(男性育休取得率30%以上など)をクリアするとプラチナくるみんに格上げされます。さらに不妊治療支援に関するくるみんプラスという上乗せ認定もあります。基準は法改正のたびに引き上げられてきたため、認定を受けた年度もあわせて確認する価値があります。
Q. くるみん認定企業でも育休が取りづらいことはある?
あります。認定基準は主に取得率という数字で測られるため、数字達成が目的化し、対象者が少ない部署に取得者が偏っているケースもあります。面接で「育休を取得した男性社員はどの部署にどれくらいいるか」「時短勤務者はどの職種に多いか」と具体的に聞くのが有効です。特定部署に偏っていれば他部署で取りづらい実態の可能性があり、全社的に分散していれば組織文化として根づいていると判断できます。
Q. くるみん認定がない会社は避けるべき?
一律に除外すべきではありません。認定の申請・維持には相応の事務コストがかかるため、十分に子育てにやさしい運用をしていても申請自体をしていない中小企業は少なくありません。特にベンチャーやスタートアップでは行動計画を整備する余力がない一方、経営者自身が柔軟な働き方を体現しているケースもあります。認定の有無は有力な判断材料の一つとしつつ、面接での質問や口コミサイトの情報も組み合わせて総合的に判断することをおすすめします。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。